06.


「では、お前の部屋はここだ。」

「…………。」

「ここ!?」


王は、私がお礼を言った後すぐに、私の部屋に案内すると言ってきた。
私は、ちゃんと暮らせるような部屋だろうかと、少し不安を持ちながら、王におとなしくついていく。

王の間は、ただの部屋とは呼べないほど広い。やっと一枚の扉まで歩くと、王はその扉の前で立ち止まる。
はてさて?まず扉を開けて廊下に出ないことには、部屋には辿り着かないのではないだろうか。
そんな思いが頭をよぎるけれど、王の無表情な顔を思い出して口にはださない。

王はゆっくりと扉を開いた。

そして、文頭に戻る。

「では、お前の部屋はここだ。」

「…………。」

「ここ!?」
「何か文句があるのか?」

私は大声を上げるが、頭上で響く男の無機質で冷たい声に身を窄めて口を閉ざす。

「い、いいえっ。けど……。」
「けど?」
王は冷ややかな目線で先を促す。

「ここは、あなたの部屋ですよね。」
私は元いた王の間を指さして言う。
「ああ、そうだ。」
「で、こっちが」
「お前の部屋だ。」
王は、問題ないと言うように簡単に言い放つ。

違う、これは大問題だ。心の中で頭を抱えて嘆く。
部屋を貸して貰っておいてなんだが、帝王と言えど、さっき会ったばっかりの男の部屋と扉一枚で繋がっている部屋に住むなんて。

王は、私の嘆きに気づいたのか、少し不機嫌そうな顔をする。
「なにが気にくわない。部屋の広さも申し分ない。まぁ、王の間には若干劣るが。」

いいや、違う。私が気にしているのは、そこじゃない。
「どうして、部屋と部屋がつながっているんですか。」
「どうしてって、お前の部屋が私の部屋の中にあるからだ。」
「は?中?」

私はお前の部屋だと言われた、これまた広すぎる部屋を見渡した。
「あぁ……。」
嘆きが声になる。
なんと、その部屋の中に、扉は一つしかない。今、私と王が立っている扉だ。

「そんな!あの、私もっと狭い部屋が良いです。無かったら物置でも!」
王は、私が気にしているのが何なのか気づいているのか、いないのか、物珍しそうに私を見た。
が、すぐに冷たく無表情な顔に戻る。
「生憎、お前の部屋はもう此処だと決めた。」
「な、ど、どうしてですか?」
「ここが一番便利だからだ。」
「便利?」
「ああ。お前が何をするも、手に取るように分かるだろう?悪いが、私はまだお前を信用しているわけではない。」
「そ、そんな……。でも、私何も悪いことは、」
「お前がどう言おうと、信用するかしないかは、私が決めることだ。」

王は、私が何を言っても譲らないようだ。
それに、信用してくれっていって信用するようなものじゃない。私も、帝王という肩書きをもつ目の前の大男を、信用出来ると思っているわけではないし……。

「それから、此処に置く以上、私の言うことは絶対だ。いいな。」
「は、はい。」
一応反抗しようと男の顔を見たが、無表情を通り越して常以上に冷酷な顔だった。
仕方なく、私は力無く答える。

―バダン!

王は無表情のまま納得したように頷くと、いきなり扉を閉めて、私を閉じこめた。

「え?ええ?!」
私は王が何をしたいのかよく分からない。
慌てて扉を叩くが、厚くて丈夫な扉はびくともしない。こちらからは開かないよう。
これでは、まるで軟禁じゃないか。

しかし文句を言う相手もいない私は、室内を見渡す。

「――広っ!!」


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