07.

そこは、ああ、確かに王の間よりは狭いかもしれない。
つまりどういう事か。意味無く広い。無駄に広い。そういうことだ。

しかも、そこに並ぶ家具は王の間のそれより幾分か豪華な気がする。何故?帝王より偉い人がいるのだろうか。いいや、いない気がする。

部屋の中を歩き回る。この部屋に部屋と部屋を繋ぐ扉は一つしかないが、ガラス張りのドアならある。つまり、バルコニー(いやベランダか?)に続くドアだ。
私は外に出てみる。これをバルコニーと言うべきか、ベランダと言うべきか、テラスと言うべきかは定かではないが、状況を説明すると、まず、屋根がある。そして、広い。友達を呼んでバーベキューしたい。もちろん、柵は付いている。

が、外に脱出出来るかもしれない!
ここから柵を乗り越えて、中庭なり小道なりに出れば良いのだ!

そう思った私が馬鹿だった。
私は柵越しに下を見て、瞬時に一歩後ろへ下がる。

「た、高い……。」

自慢じゃないが、私の家は代々高所恐怖症だ。この部屋の高さは……、うん、ビル20階分くらいありそうだ。
とても下は直視出来ない。しかし、一歩下がって180゚、視界いっぱいに広がる王宮を眺める分には申し分ない高さだ。多分王城と言うからには、他の宮殿やら城やらよりは大きく出来ているのだろう。

所謂、絶景だ。
王宮の門だろうか、が遠くに見える。とても雄々しくて、存在感のある門だ。王宮は、ちょっとした高台になっているようだ。王宮の外には、城下町が広がっている。ここからだと詳しく分からないが、かなり綺麗な町に見えた。

しかし、風が強い。飛ばされてこの高さから落っこちたら洒落にならない。実際に落ちた自分を頭の中で想像してしまった私は、一目散に室内に戻る。

うん。ここからの脱出は、諦めよう。

私が部屋の中を歩きだそうとした、その時、丁寧に扉を叩く音がする。予想外の音。肩がビクッとなる。神経が過敏になってるかもしれない。
私が何も行動を起こさないでいると、もう一度、同じ音が。

この部屋には私以外誰もいない。よって、その音に答えられるのは私だけだ。
それを確認した私は、ゆっくりと返事をする。

「は、はい?」


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