15.


その夜。
ダークブルーの瞳を持つ男は、自室に、ある者を呼び寄せた。


「カイよ、この任務は、今までで一番重要だ。しくじればどうなるか、分かっておろうな?」
男は、痩けた頬に冷酷な笑みを乗せて諭す。

「承知しています。」
答えたのは、まるで生気を感じない、無表情の男だ。
歳は、まだ青年と言っていい位だろう。顔は、美男子、と呼べる部類に入るだろうし、背も高く、体格もスラッとしている。
ただ、何処か近寄り難い雰囲気がある。それをはっきりと言葉にするのは難しいが、彼が常人とは違うのは明らかだ。

「その女は、我が神に仇を成す、悪魔の娘。その罪は余りにも深く、我々で責任を持って罰を下さなければならない。」
「はい。」
青年は、男の言に答える声さえも、無機質な響きがする。

「黒髪黒眼の娘を連れてくるのだ。それほど丁重に扱う必要はないが……、顔には傷を付けてはならない。」
「はい。」

「そして、早急に事を成さねばならん。」
「はい。」
「場所の特定は、既にすんだ。」
「それは……、」
青年が初めて男の言葉に反応した。顔をほんの少し動かす。
「イルエディア帝国王宮内だ。お前が見つかれば、まず牢屋行きは免れぬ。」
「…………。」
青年は無言で答える。
イルエディア帝国王宮の警備は、ライナで一番厳しい。そんな事は誰でも知っている。

しかし男は、青年を心配してやるつもりは微塵もない。男にとって、人は道具だ。それ以上でも、それ以下でもない。

「お前ほどの者なら、問題にすべきことでも無かろう。」
男は投げやりに言う。
「……はい。」
「では、直ちに発て。」
そう言って、青年を一瞥した。

「……御意。」
青年は、意志無く答える。青年の瞳は、この世のどんな美しい色も、映してはいないようだった。
それはまるで、死人のようだ。


青年は瞬間移動をして消えた。


その影は闇に溶け、すぐに分からなくなった。



部屋に残る男の表情には、夜の闇が差し、不気味な威圧感がより一層濃く見える。
部屋には、蝋燭の光しかない。

男は微かに照らす小さな光を、ゆっくりと吹き消した。


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