21.

「あれ?」
目が覚めると、そこはベッドの上。
うーん、私どうしてここに?

「あれは、夢?」
つい声に出して確認してしまう。
信じられない。あのでかくて無表情な王様が、私を腕に……っ
「うわぁー!!!!!」
すっかり思い出して顔を真っ赤に染めた私は、ベッドの上で丸まってごろごろと行ったり来たりする。
無理。思い出しただけで、恥ず……
「何をしているのだ。」
「っきゃぁ!」
急にその王の声がする。体を足の先まで硬直させて後を振り返ると、そこにはあの王がやっぱり無表情でこっちを見てる。い、いつからそこに?
ご本人登場というまさかの展開に、もちろん驚きを隠せない。
「ふ、あ、あの、その、えっーと、だから……だ△§m∂∽⊇p∋◇£!」
恥ずかしさと驚きで私はパニック状態。
「……人語を話せ。」
ひ、ひとご……私は人で無いとでも?ひど!!

「だから、そのぉー……、」
「だからなんだ。」
王は呆れた様子もなく、紅い目でまっすぐ私を見つめて、嗚呼どうしてだろう、こっちに近づいてくる。
私は更に焦り出す。
「ささささささっきの、あ、あれは夢?」
「さっきのとは?」
早口でまくし立てる私に対して、王はあくまでもゆっくりと喋る。
その間にも王はずんずん近づいてきて、遂に私との距離1メートル。
「う、腕でだ、抱き……。ぬあああ!!やっぱり駄目!あれは、夢、夢よ!そうでしょ?!」
私はもはや必死の形相で王に確認する。

「……ああ、あれか。」
王は、にやりと笑う。王の世にも珍しいその微笑は、何とも色気たっぷりで、私の顔は一瞬で真っ赤。いや、これは絶対に正常な反応だ。世の女性なら誰でも顔を真っ赤に染めるに違いない。ほんと美形って怖い。
「あれは、夢ではない。」
王はいつものように、サラッと無表情でのたまう。
「そうよね。あれは夢よね。って、へ?」
驚いて、一瞬体の力が抜けたその瞬間、王は私の腕を掴んで例のごとくグイッと引き寄せる。
そして私は王の胸の中にすっぽり収まった。
はは〜ん、これは確信犯か?なんて思う余裕は、もちろん今の私にはない。かろうじて心臓停止を免れたくらいである。そして私は、頭のてっぺんから足の先まで、見事に硬直した。
固まってるのを良いことに、王は私の腰に腕を回してすこし体を持ち上げる。すると私は立っている王と同じ目線の高さになった。今まで見上げてきた紅い瞳がほんのすぐ先にあって、真っ直ぐ私を射抜く。
「小さいな。」
ぬぬ。何ですと!これでも日本だったらほぼ背の順で真ん中だったのに!まだ赤みの残った顔で、ギッと王を睨む。17歳の乙女に向かって、何という言いぐさだ。
「そして柔らかい。」
私が睨んだのが面白かったのか、ククッと笑って王は更にグッと私を引き寄せた。
「あっ!」
今回はその微笑に驚いている暇はなかった。王の顔が丁度私の肩の上にくる。
ち、近い!近いって!!!!私はゆでダコ状態に早変わり。王の吐息が私の首筋にあたって、私はその度にビクビクする。
嗚呼、心臓がもつかどうかが一番心配だ。
「ちょっと!やめてよ!」
私は硬直から解かれた体で抵抗するが、やはりここは男と女。しかも魔法という、インチキ技まで持っている。抵抗しても敵うはずなく、じたばたしていた私の腕は簡単に捉えられてしまう。
「大丈夫だ、今は何もしない。」
王は私の耳に低く囁く。
何故か体の力が抜けてへなりと崩れそうになった私を、王の腕がしっかりと支える。

でも、ちょっと待って!今、たった今、もう既に何かしているんじゃないでしょうか!この状態は何もしていないにカウントされるんですか?
しかし、私の心の叫びは王には届かない。ただただ、私は金魚のように口をぱくぱくさせているだけだ。
「……こうしていると落ち着く。」
王は呟くように言う。
私は不覚にもドキッとした。でも、残念ながら私は全然落ち着かない。寧ろ真逆だ。
「だから諦めろ。」
……なんだその強引な理論。

嗚呼、神様。私はこのセクハラちっくな行為に慣れなくてはいけないのでしょうか。


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